5. 化学物質対策①:化学物質の審査と管理
事業のあらゆる場面で化学物質対策が必要
化学物質は現代社会に無くてはならないものですが、使い方によっては人の健康や環境に悪影響を及ぼすこともあります。世界の化学物質数は米国化学会によると1億を超え、問題が起きた場合の影響は計り知れないだけに、事業者には化学物質の適正な管理が求められます。
わが国では、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)と「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法)が化学物質全般を対象とした規制を行っており、「労働安全衛生法」(安衛法)、「毒物及び劇物取締法」(毒劇法)、「農薬取締法」(農取法)、「食品衛生法」などが個別領域の化学物質対策を定めています。
また、「ダイオキシン対策特別措置法」、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」、「水銀汚染防止法」などが有害物質を厳しく規制しています。さらに、「建築基準法」や「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」(家庭用品規制法)が、建材や家庭用品に対する規制を行っています。これらに加えて「廃棄物処理法」、「大気汚染防止法」、「水質汚濁防止法」、「土壌汚染対策法」などの規定が適用される場合もあります。
化審法で事前審査と上市後の管理を徹底
化審法は、人の健康を損なうおそれや、動植物の生息・生育に支障を及ぼすおそれのある化学物質による環境汚染を防止するために、化学物質の製造・輸入・使用等を規制しています。化学物質が市場に流通する前の事前審査として、「新規化学物質」を製造・輸入しようとする者は、厚生労働・経済産業・環境の3大臣に届け出て審査を受け判定を仰ぐ必要があります。ただし、低生産(高濃縮でなく年間10t以下)・少量新規(年間1t以下)・中間物等(政令で定める用途)・低懸念高分子化合物―などの場合は、事前の「審査」ではなく、事前の「確認」を受ければ製造・輸入することができる「特例制度」があります。
上市後の管理に関しては、PCBなど難分解・高蓄積・人への長期毒性・高次捕食動物への長期毒性がある「第一種特定化学物質」について、環境中への放出を回避し、製造・輸入を許可制として原則禁止しています。環境汚染防止措置等の表示義務や政令指定製品の輸入禁止などの規制もあります。また、既存化学物質のうち第一種特定化学物質に該当する可能性のある「監視化学物質」について、使用状況等の詳細な把握と用途・製造量等の届出を義務づけています。さらに、トリクロロエチレンのように人の健康や生態影響のリスクがある「第二種特定化学物質」について、環境中への放出を抑制し、製造・輸入(予定及び実績)数量、詳細用途等の届出を義務づけています。許可なく第一種特定化学物質の製造等を行った者などに対する罰則もあります。
PRTRとSDSで化学物質の自主管理を促進
化管法は、排出・移動時に化学物質の量を把握して届け出る「PRTR制度」と、危険有害性情報を事前に提供する「SDS制度」を二本柱として、化学物質の自主的な管理の改善を促し、環境保全上の支障を未然に防止するための規制を行っています。
事業者はPRTR制度に基づき、事業所ごとに化学物質の環境への排出・移動量を把握して都道府県経由で国へ届け出ます。対象となるのは、製造業など24業種、全事業所合算で常時使用従業員数が21人以上、いずれかの第一種指定化学物質の年間取扱量が1t以上(特定第一種指定化学物質は0.5t以上)の事業所あり―の全てを満たす事業者です。違反すると20万円以下の過料に処せられます。国は受理後に集計・公表し、個別事業所の届出データも開示しています。
一方、事業者はSDS制度に基づき、ベンゼンやダイオキシン類などの「第一種指定化学物質」及び「第二種指定化学物質」並びにそれらを含む製品を他の事業者へ譲渡・提供する際に、安全データシート(SDS)により危険有害性情報を提供する義務を負います。PRTR制度と違って業種、常用雇用者数及び年間取扱量などの要件はなく、全事業者が対象です。努力義務としてラベルによる表示も求められます。
化学物質の管理については、自治体が条例や事業者向けの管理指針などで届出項目や対象事業・物質の追加を行っている場合もあり、注意が必要です。
📚 参考①:化学物質管理(経済産業省)http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/
📚 参考②:化学物質情報検索支援システム(環境省)http://www.chemicoco.go.jp/
